男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
「これから授業なの?」
「はい。リリィもそろそろ、家庭教師の先生がおいでになる時間では?」
「今日はお休みなの。マチルダ先生、ギックリ腰で動けないんですって。お可哀想ね。
でも私、ちょっとだけ喜んでしまったの。レース編みは性に合わないから」
貴族の女性の嗜みとして、レース編みは必須。
普通は母親から娘へと技術が伝えられるものなのだが、リリィが生まれて間もなく、先代のお妃様が亡くなられたということで、レース編みにも家庭教師がついているみたい。
先生のギックリ腰はお気の毒だが、レース編みをしなくて済むと喜ぶリリィ。
その気持ちはよく分かる。
私も実家でレース編みをやらされたとき、あまりの退屈さに発狂しそうになったから。
私ほどとはいかなくても、リリィもなかなかのおてんば娘だ。
自分に少し似ている性格や、こうして懐かれると妹のように可愛くて、つい頭を撫でてしまった。
するとリリィが目を丸くして、その白い頬がピンクに色付き、恥ずかしそうな顔をした。
「あ、すみません! 失礼なことをしてしまいました」
慌てて手を引っ込めて謝る私に、リリィは照れ笑いを浮かべて首を横に振る。
「ううん、ステファンの手は温かくて優しくて、嫌じゃないわ。アミルお兄様に撫でられるよりも嬉しかった。お兄様には内緒よ?」