男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
私が先にボートに乗り込み、リリィは差し出した私の手に掴まるようにして乗り込んだ。
向かい合って座り、オールを漕ぐのはもちろん私。
大きな池にゆっくりと漕ぎ出すと、リリィは大きなつばのついた帽子の下で楽しそうな顔を見せる。
ちょうど池の真ん中辺りまでくると、「止めて」と言われたので、オールから手を離した。
「ステファン見て、みんなが小人みたいだわ」
リリィの指差す方を見ると、お茶会を楽しむ人たちが親指ほどの大きさだ。
結構な距離が開いて、ふたりきりになった気分。
リリィもそう思ったようで、「まるで恋人たちの逢瀬のようね」とおませなことを言うから、私は苦笑いした。
騎士と姫君のカップルに見えなくもないが……私は女で、リリィはまだ子供だ。
私にはどうしても、姉妹の水遊びとしか思えない。
おませなリリィが恋人ごっこを始めると困るから、私は思いついた別の話題を口にする。
「近々、バルドン公爵が舞踏会を開かれるそうですが、リリィも行くんですか?」
盛大に開くようなことを言っていたから、きっとリリィも招待されているはずだと思って聞いていた。
そして、大公殿下と同じように『行きたくないけど行くしかない』というような答えが返ってくるだろうと……。