男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました

「リリィはどうしてバルドン家の舞踏会に参加したいのですか?」


他の貴族の集まりなら分かるけど、バルドン家のパーティーに参加したいとは、私なら思わない。

でもバルドン公爵はリリィにとっても叔父だから、もしかすると彼女は懐いているのかもしれないと思って聞いてみた。

するとリリィはなぜか辺りを見回す。

池の上にボートは一艘だけで、誰も聞いていないというのに、まるで内緒話をするように声をひそめて話し出した。


「叔父様のことは好きじゃないけど、バルドン家のパーティーなら、たくさんの貴族が集まるでしょう? お友達ができるかもしれないじゃない。
叔父様だけじゃなく、息子のロドリグも、娘のエリーヌも大嫌いだけど、我慢してでも行きたいわ」


私もバルドン公爵にいい印象を持てずにいるから、叔父といえども、やっぱりリリィも同じなのかと納得する。

でも引っ掛かる点もあった。

息子のロドリグという人には会ったことがないけれど、大人しそうなエリーヌ嬢のことまで嫌いとは、一体どうして……。

リリィにつられて、私も小声で聞き返す。


「エリーヌ嬢も好きじゃないんですか?」


「そうよ。あの見た目に惑わされてはダメよ。
私ね、会っただけで、その人がいい人か悪い人かわかるの。
バルドン家の人たちのオーラは、みんな黒。自分の幸せしか考えられない人たちなのよ」


「オーラ……?」


初めて聞く言葉に首を傾げた私に、「あら、知らないの?」と、リリィは得意げに説明してくれた。

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