男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
思い出していたのは、中庭で剣を取り上げられそうになったときのこと。
窓から覗いていた殿下が、公爵を諌めてくれたから、この剣は今も私の腰にある。
バルドン公爵の機嫌を損ねれば、大きな面倒ごとに発展するかもしれないというのに、あのときの殿下は、結構厳しい言葉を口にしてくれた。私のために……。
今朝、エリーヌ嬢を振って怒らせたことは私には関係ないことだけど、なぜか続き間に住まわせた話をされて、そのことで言われた文句には、私は無関係とは言えない。
なんだか、殿下に対して申し訳ない気が……。
知らず知らずに掛けていた迷惑に気づき、急に顔を暗くすると、リリィが身を乗り出すようにしてギュッと手を握ってきた。
「大丈夫よ。アミルお兄様がいる限り、この国は平和だわ。なにも、心配いらないの」
不安を払拭しようとするその言葉に、私はキョトンとしてしまう。
私が考えていたのは国のことではなく、大公殿下に迷惑をかけたことについてだけど……それを説明できずに「そうですね」と笑顔を作った。
するとリリィも笑顔になり、「あのね、お兄様のオーラは金色で、ステファンは黄色よ」と話がオーラに戻された。
「僕は黄色ですか」と笑ったとき、突然強い風が吹き抜け、リリィの帽子が飛ばされた。
ピンクのリボンのついた白い帽子は鳥のように風に乗り、池の奥の睡蓮群の中に落ちてしまった。