男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
小さな生き物たちに「ごめんね」と謝りながら、やっとのことで葉の上に落ちている帽子までたどり着いた。
それを頭に乗せて、ボートへと引き返す。
リリィはハラハラした顔してこっちを見ていて、私がボートの縁に片手を掛けると、ポロポロと涙をこぼした。
「わっ、リリィ、泣かないで下さい!
ほら、帽子はちゃんとーー」
「違うわよ! ステファンが溺れちゃうと思って、私……」
リリィの涙の意味は、私を心配してのことだった。
びしょ濡れでボートに上がった私は、帽子をリリィに渡して笑顔を向ける。
「服を着たままでは泳ぎ難いけど、大丈夫ですよ。リリィを水の上に残しているのに、溺れることはできません」
そう言った直後に、リリィの顔がなぜか真っ赤に染まる。
涙に濡れる瞳が艶めいて、「ステファン……」と熱っぽい声で名前を呼ばれた。
あ、れ……? リリィの様子が変わったように見えるのは気のせいか。
十二歳はまだ子供だと思っていたのだが、なんだが急に大人びた顔つきになったような……。
リリィは涙を拭いてから、思い切ったように口を開く。
「ステファン、あのね、私はまだ子供だけど、後四年もすれば大人になるわ」
「そ、そうですね」
「だから、あの……四年後に、私をステファンのお嫁さんにして下さい!」
「え……えええっ!?」