男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
それは説明できないので、曖昧に笑ってやり過ごす。
最初は生意気だったエドガーを、今は可愛く思っていた。
ビーンシュトック家の方が爵位が上なのに、こうして慕われると、弟ができた気分になる。
それでつい、彼の赤茶の髪を撫でたら、まだあどけなさを残す十三歳の少年の頬に、薄っすらと赤みが差した。
「そうだ、ステファン殿を是非、父上に紹介させて下さい!」
エドガーは私の腕を引っ張り、歩き出す。
私は慌てて空の皿とフォークを、側にいた使用人に渡し、ついていく。
しかし、ホールの真ん中まで来て、遠くに父親を見つけた様子のエドガーが足を止めた。
「すみません、今は取り込み中のようで……」
エドガーの視線を追うと、その先には殿下を取り巻く貴族たちの姿があった。
先ほどよりは大分、混雑が解消されているが、殿下はまだ十人ほどの貴族に囲まれていた。
その中にエドガーと同じ、赤茶の髪をした紳士がいる。あの人がビーンシュトック侯爵なのだろう。
侯爵は私と同じくらいの年頃の娘を連れていて、大公殿下に挨拶させている様子だった。