男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
邪魔するつもりはない。ただ、どんな会話をしているのか、聞きたいだけ。
聞き耳を立てるなんて、はしたないことだと、分かってはいるけれど……。
エドガーと顔を見合わせて、頷き合うと、殿下の右横からこっそりと近づいて行った。
殿下の周囲には、まだ挨拶待ちの貴族がいる。
間にふたりの男性を置いて、その後ろからこっそりと覗き見る私たち。
聞こえてきた会話は、ダンスのこと。
挨拶回りも大分落ち着いてきたことだし、もうすぐ音楽が流れて、貴族たちが男女のペアを組み、踊り始めることだろう。
「わたくし、今日のために教師を雇って、ダンスを練習しておりました。ワルツもタンゴも、上手に踊れます。大公殿下、どうか、わたくしと一曲、踊って下さいませ」
エドガーのお姉さんは、ダンスを申し込んでいた。
以前、ビーンシュトック家の晩餐会では、殿下と話すことさえできずに終わってしまったらしいから、今日は始めから積極的にいこうと決めていたのか……。