男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました

真っ赤な顔でダンスに誘う彼女は、今、必死なのだと思う。

一曲、踊るために、ダンスの練習に励んでいたとは、健気で男心をくすぐりそうな気がした。


殿下はじっと見据えるだけで、まだ返事をしない。

エドガーは指を組み合わせて祈っていて、私は……申し訳ないが、応援できずにいた。


殿下が女性と踊る姿を見たくない。

舞踏会なのだから、誰とも踊らずに終えるわけにはいかないと分かっている。

それでも、断ってほしいと、勝手なことを考えてしまっていた。


殿下が口を開きかけた。

なんと答えるのかと、私の中に緊張が走り抜けたとき、聞き覚えのあるしゃがれた笑い声がして、周囲の貴族が騒ついた。


挨拶待ちの貴族を蹴散らすように、割って入ってきたのは、バルドン公爵とエリーヌ嬢。

まだ返事をもらっていないエドガーのお姉さんも、ビーンシュトック侯爵も、邪魔だとばかりに場所を空けさせられ、バルドン公爵は、殿下の真ん前にエリーヌ嬢を立たせた。


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