男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
「殿下、どうですかな? 今宵のエリーヌは、格別に美しいと思いませんか」
真紅のドレスに身を包んだエリーヌ嬢は、美しいだけではなく、情熱的に見えた。
艶やかな茶色の髪はサイドを結い上げて、白いうなじを覗かせている。
髪を飾るのはルビーのティアラ。
大きく開いた胸元にも、大粒のルビーとダイアをあしらった、ゴージャスなネックレスが輝いていた。
ここが自分の屋敷であるためか、それとも着飾った自分の美しさに自信があるためか、エリーヌ嬢はかつて謁見の間で見たときよりも堂々としていた。
スカートを両手で摘んで殿下に頭を下げ、戻した顔には誇らしげな笑みが。
周囲の視線を一身に浴びていることを、きっと彼女は意識している。
私こそが大公妃に相応しいという気持ちが、表情に透けて出ていた。
大柄な男性の後ろからエリーヌ嬢を覗き見て、私はボート遊びをしたときの、リリィの言葉を思い出していた。
エリーヌ嬢のオーラが真っ黒だと、リリィは言った。
自分のことしか考えていない人だとも、言っていた気がする。
初めて彼女を見たときには感じなかった不快感が、胸の中に湧いていた。
エドガーのお姉さんよりも、エリーヌ嬢に、殿下に近づいてほしくないと感じていた。