男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
殿下とエリーヌ嬢が踊る姿は、きっと絵のように美しいことだろう。
その絵の中に、私が入る隙間など微塵もない。
家柄も見た目の美しさも、殿下に釣り合う女性はエリーヌ嬢しかいないのではなかろうか……。
ふたりからなるべく遠くに離れようとして、私はトボトボと歩き出した。
「ステファン殿?」と問いかけるエドガーの言葉も、耳に入らない。
うつむく私の目に映るのは、着ている若草色の燕尾服。
殿下が私のために仕立ててくれたこの服に、喜んで袖を通したはずだったのに、今はドレスを着てみたくなっていた。
こんな私でも着飾れば、殿下の隣に立ってもおかしくないのでは……。
いや、おかしいよね。髪は短いし、女らしくもできないし、ドレスを着たって似合うはずがないもの……。
兄のステファンとして、この場にいるというのに、急にドレスを着たいと思うなんて、私は一体どうしてしまったのか。
自分の心に問いかけると、浮かんできたのは"恋"という言葉。
消そうとしても、今度ばかりはしっかりと心にこびり付いて、掠れもしない。
もう認めるしかなかった。
私は殿下に恋をしている。
未来に繋がらない、苦しいだけの恋を……。