男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
背後が騒ついていた。
きっと腕を組んだふたりが、ダンスを踊るためにフロアの中央へと歩き出したのだろう。
それを見た貴族たちが、絵になるふたりだと、誉めそやしているのかと思っていた。
しかし……。
誰かに後ろから肩を掴まれ、私はビクリとして足を止めた。
顔だけ振り向くと、そこにいたのは大公殿下で、驚いた私は「へ?」と間抜けた声を上げた。
殿下は口の端を曲げ、「俺から離れるなと言っただろう」と文句を言う。
それから私の手首を掴んで、ズンズンとフロアの中央へ。
エリーヌ嬢と踊るものだと思っていた私は、この状況が理解できず、引っ張られて歩きながら、大きな背中に問いかけた。
「殿下、なにをなさるおつもりですか」
「ダンスだ。舞踏会に来て、踊らずに帰るわけにもいかんだろう」
「で、ですから、エリーヌ嬢が先ほどお誘いになられたのでは……」
「相手は俺が決める。ステファン、踊るぞ」
驚き戸惑う私だったが、それ以上は問答無用で連れて行かれ、既に踊り始めている貴族たちの中に混ざった。
向かい合わせに立つと、青い瞳が真っすぐに私を見下ろし、優しく微笑んだ。
「ワルツは踊れるか?」
「少しでしたら……」