男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
ニヤリと口の端を上げた公爵に、なんて酷いことを言うのかと、私は目を吊り上げた。
変死騒ぎを殿下のせいにするとは、無礼にもほどがある。
そもそも邪視は迷信のはず。
七年前、殿下の弟君が身を持って証明し、その場にはバルドン公爵もいたはずなのに。
殿下は瞳の鋭さを増しただけで、反論せずに黙っている。
それをいいことに、「殿下がしっかりしませんと……」と、公爵が調子に乗って説教を続けるから、我慢できなくなった私は壁際から声を上げてしまった。
「邪視は迷信で、人を殺す力はありません! それはアベル様が証明されたはずです!」
ジロリとこっちを睨んだ公爵は、「こやつに、わざわざ昔の話をしてやったんですか?」と殿下に文句を言う。
それから「まぁいい」と、肥えた腹を私の方に向けた。
「迷信ではない。数秒、目を合わせただけでは死なないようだが、呪い殺す力はある。その証拠にアベルは変死しただろう」
「変死じゃありません!
アベル様は事故でーー」
すぐさま反論しようとしたが、「ステファン、やめろ」と低い声で殿下に叱られた。
私の役目は護衛であり、会話に口を挟むことを許されてはいない。
それをハッと思い出し、申し訳なさに縮こまる。
殿下は小さな溜息をつくと、怒りを押し殺したような静かな声で公爵に言う。