男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
「叔父上の心配は、よく分かった。邪視の件は青の騎士が調査中だ。近日中に捕らえることを約束しよう。話がそれだけなら、もう帰ってくれ」
「近日中ですな。捕らえられなければ、エリーヌとの婚姻の話を進めさせてもらいますぞ。これも天下泰平のため。民を不安から救うためですからな」
どうしても邪視の話を、エリーヌ嬢との結婚に結びつけたいようなバルドン公爵。
一方的に勝手な要求を突きつけると、クロードさんが開けたドアから、廊下へと出て行った。
パタンとドアが閉められたら、謁見の間にいるのは、殿下と私とクロードさんの三人になる。
クロードさんが、やれやれと言いたげな顔をして、殿下の側に歩み寄った。
「困ったことになったね。近日中に邪視の少年を見つけなくちゃいけなくなったけど、どうするの?」
私も同じことを思っていた。
近日中に見つけられなかったら、バルドン公爵のことだから、殿下が拒否しても強引にエリーヌ嬢を連れて押しかけてきそうな気がして。
実ったばかりの私の恋は、熟す前に枝から落ちてしまうのかと不安になっていた。
殿下は肘掛に頬杖をつき、足元の一点を見つめてなにかを考えている様子。
それからクロードさんの問いかけの答えではなく、別のことを口にする。
「邪視騒ぎと、早い後継ぎをという話は、叔父上の中だけのこじつけか? それとも本当に民の間で、そういう声が上がっているのか?」