男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
クロードさんは困ったように眉をハの字に傾けた。
殿下の考えが分からないのではなく、それを私に伝えていいものかどうか、迷っているように見える。
「お願いします! このままでは私は……」
恋が破れる不安に押し潰されそうで、必死に頼み込むと、「分かりました」と優しい声で言ってもらえた。
「ステファニー様は、アミルから直接、七年前の話を聞いたのですよね?
それなら、お教えしてもよろしいでしょう」
クロードさんはまず、殿下とバルドン公爵の関係性から話し始めた。
昔は叔父としてバルドン公爵を慕っていた殿下だったが、今は距離を置くようにしている。
かつてのように執務室に入れることはなく、なるべく重要な政務には関わらせないようにしているそうだ。
その理由は……猜疑心を抱いているから。
クロードさんはポケットから白いハンカチを取り出して、玉座の金細工についた微かな汚れを拭き取っていた。
その仕事を終えると、視線をまた私に戻す。
いつもの微笑みを浮かべているクロードさんだけど、その顔はどこか悲しそうにも見えた。
「猜疑心とは?」と話の続きを促す私に、彼が教えてくれたのは、弟君の葬儀のときにバルドン公爵が殿下にかけた言葉だった。
「バルドン公爵はこう言ったんですよ。
死んだことは残念だが、国のためにはよかったと思えばいい。カブレラは失脚し、アベルを持ち上げていた雑魚どもも、これで諦めがつくだろう。アミルカーレとワシとで、強い国を作ろうじゃないか」