男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
私の中に、カッと怒りが湧く。
最愛の弟を亡くしたばかりの殿下に、『よかったと思え』などと、どうしたらそんなに酷いことを言えるのか。
怒りと同時に、猜疑心の理由を知る。
次期大公に弟君を推していた貴族たちが急速に力を失い、誰が得をするのかと言えば、バルドン公爵だ。
今まで以上に権力を握る結果となって、甥であるアベル様の死さえも、本当によかったと思っていそうだ。
もしかして、全て仕組まれていたことだったりして……。
ハッとしてクロードさんを見ると、彼はゆっくりと頷いた。
「もうひとつ、後に分かったことですが、カブレラ公爵の屋敷に、邪視の少年が匿われているという情報をアベル様に流したのは、バルドン家の執事でした」
「えっ!? 邪視の少年が、カブレラ公爵の屋敷から出てくるところを発見したのも、バルドン家の護衛兵でしたよね?」
「そうです。おかしいと思うでしょう?
もしかしたら……と。しかし証拠がないのです」
私はゴクリと唾を飲み込んで、クロードさんが濁した言葉を予想して口にする。
「邪視の少年を匿っていたのは、カブレラ公爵ではなく、バルドン公爵だったということですか。
アベル様が亡くなられた事故も、バルドン公爵の企みですか?」
「さすがに、そこまでは違うと、思いたいものです。アベル様にとっても叔父でありますし、殿下も本当は信じたいのですよ。バルドン公爵を」