男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
やり切れない気持ちでかぶりを振り、唇を噛み締めると、殿下は私の頭を撫でて慰めてくれた。
「確たる証拠もないのに、叔父上を問い詰めるわけにもいかないんだ。そんなことをすれば、叔父上の息のかかった貴族や豪商たちが抗議に押し寄せるだろう」
「バルドン公爵を慕う人が、そんなにいるのですか?」
「慕うと言うより、利害関係だな。バルドン家が営んでいる貿易会社との取引で、利益を得ている者が複数いる。叔父上がいなくなれば、収入に困ることだろう。
だが、調査は続ける。なにか言い逃れのできない証拠でも、見つかればいいが……」
執務室の窓から、完全な丸に近い大きな月が見えていた。
カラン、カランと、小さく聴こえてくる教会の鐘の音は、終課の鐘と呼ばれるもの。
一日の終わりを知らせる鐘で、城下街の民は、そろそろベッドに入ろうとしている頃だろう。
鐘を聴いた殿下は、話を終わらせようとする。
「今すぐに叔父上を罪に問うことはできないが、これで邪視騒ぎは落ち着くはずだ。
明日の夕方、近隣の貴族たちを集めようと思う。クロード、朝一番に手紙を届けるよう手配してくれ」
「分かった」と返事をしたクロードさんに対し、私だけは首を傾げた。
こんな大変なときに急な晩餐会を開くわけはないし、貴族たちを集めてなにをするつもりなのか……。