男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました

肩を抱き寄せられ、ポロリとこぼれた涙をすくうように、殿下の唇が頬に触れる。

突然の甘い展開に、たちまち鼓動が速度を上げて、私は慌てていた。

想いを通わせたのは、つい最近のことなので、こういった展開にまだ心がついていけないのだ。


「見逃してくれ」と殿下が頼んだ相手は、私ではなくクロードさん。

テーブルを挟んだ向こうから、「まったく、もう」と呆れた声がして、それから椅子の上で背を向けたような衣擦れの音がした。

その後は、唇が重なって……。


二度目のキスは、触れるだけでは終わらなかった。

私を味わうように、深くゆっくりと。

背中と頬に触れる優しい手の温もりと、私を求めてくれる柔らかな唇。

愛されていることを実感させてもらうと、戸惑いは薄らいで、身を任せようという気持ちになれる。


殿下が、愛しい……。


窓から月が覗く中で、甘くとろけるような幸せに、包まれていた。


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