男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました


◇◇◇

翌日の夕暮れ時。

謁見の間には、都に屋敷を持つ貴族たち、二十名ほどが集まっていた。

彼らは、邪視が迷信であると確認させるための証人だ。


七年前は証人が少なかったので、邪視を信じる者をほとんど減らせなかったが、今回は大勢の前で証明してみせる。

目を合わせても、なにも起こらないのだと、口伝えに噂が広まることを期待していた。


殿下はまだ謁見の間に現れず、バルドン公爵の到着もこれからみたい。

貴族たちは輪を作り、ヒソヒソと話し合っている。

それを私は、護衛の騎士として壁際に控えながら聞いていた。


「殿下は本当に、邪視の子と目を合わせるおつもりなのか」

「手紙には、そう書かれていましたな。
どうしますか? 皆でお止めしたほうが宜しいかと私は思いますが」

「殿下の御身に万が一のことがあれば、この国はどうなる? お世継ぎもまだだというのに……」


邪視を信じる彼らはひどく不安げな様子で、殿下の身を案じる会話は、徐々に声のトーンが大きくなっていく。

それを聞いていると、私にまで不安が伝染してしまった。

アベル様の話を聞いてからは、邪視は迷信だと理解したはずなのに、貴族たちの言う『万が一』という言葉が、心に張り付いて剥がれてくれない。

七年前の少年の目には、人を呪い殺す力がなかったのかもしれないが、もしかして今回の少年の目は……そんな心配をしてしまった。

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