男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
落ち着かない気持ちで視線を彷徨わせると、堂々とした他の騎士たちの姿が目に入る。
私を含めた青の騎士四人が四つ角に立っていて、私のように不安そうな顔をしている者はひとりもいなかった。
それを見て、しっかりしなければと自分を戒める。
私は殿下を信じ、その指示に従うだけ。
護衛の騎士がオロオロと心を乱して、どうするのかと……。
心に湧いた不安をなんとか押し込めたとき、クロードさんが開けたドアから、バルドン公爵が入ってきた。
その後ろには、息子のロドリグもいる。
さっき心を乱さないようにと思ったばかりなのに、ふたりの姿にカッと怒りが湧き上がった。
バルドン公爵に対しては、黒幕のくせに、素知らぬふりして堂々と入ってきたのが許せない。
ロドリグに対しては、嘘をつかれたことを思い出し、腹を立てていた。
舞踏会で彼から聞いた話は、デタラメとまでいかないが、大事な部分が完全に間違っていた。
後継争いの果てに、殿下がアベル様を殺したなんて、よくもそんな嘘を……。
ロドリグのせいで思い悩み、殿下を避けてしまったじゃないかと、文句を言いたい気分でいた。
権力のあるバルドン親子の登場に、貴族たちが挨拶する間もなく、続いて殿下も入ってきた。
縦長の謁見の間で、貴族たちは窓を背にして一列に並ぶ。
その先頭はバルドン公爵で、赤絨毯の上を颯爽と歩く殿下に向け、皆が揃って頭を下げた。