男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
昨日、殿下とクロードさんが予想した通り、バルドン公爵は全てを執事のせいにしてやり過ごす気だ。
自分の命令で動いた執事を、処刑しても構わないとは、血の通った人間なのかと疑いたくなる。
私は玉座の右側の、壁の隅に立っているので、視線をぶつけ合う、殿下と公爵の横顔が見えていた。
ふたりとも険しい顔をして、お互いの出方を探るように黙り込み、口を開かない。
一方、他の貴族たちは、まだ詳しい事情を知らないのか、「バルドン家の執事がなにかしたのか?」と、ヒソヒソ話す声が聞こえてきた。
ここに呼ばれた貴族たちに、全てを暴露したい……そう思っても、発言権を与えられていない私は、我慢して唇を噛み締めるのみ。
確たる証拠がないのに、問い詰めることはできないと、昨日殿下は言っていた。
きっと私なんかより、殿下の方が何十倍も悔しい思いでいることだろう。
騒つく謁見の間で、睨み合う殿下と公爵。
しばらくして先に口を開いたのは、殿下だった。
「いつまでも何も気づかぬ若輩者だと思うなよ。この件は、徹底的に調べ上げる」
「はて、なんのことやら」
ふてぶてしい公爵への怒りを、ぐっと押し込めるかのように、殿下は一度目を閉じる。
大きく息を吐き出して目を開けると、ドア前に控えているクロードさんに言った。
「さっさと終わらせよう。子供をここへ」