男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
語りかける殿下の声は、優しかった。
強い緊張を感じても、怯える必要はないと分かったのか、少年は小さな声で答える。
「ハミン……」
「響きのいい名だ。ハミン、包帯を取るんだ。その目を俺に見せてくれ」
少年は隠された目を殿下に向けて、小さく首を横に振る。
それでクロードさんが、代わりに外そうと、包帯に手をかけた。
すると彼はクロードさんの手を払いのけ、包帯を外されないようにと、両腕で頭を抱え込んだ。
「だ、駄目。僕の目を見たら、みんな死んじゃう……」
邪視を肯定するようなことを、少年自らが言ったことに驚かされた。
お前の目は呪いの目だと、誰かに言われ続けて、信じてしまったのだろうか……。
そう考えて幼い彼を哀れに思ったが、別の考えも頭を過る。
目を合わせた人が、目の前で倒れる姿を見たことがあるから、そんなことを言うのでは……。
少年の言葉に反応して、貴族たちが一層騒ぎ出した。
「殿下、おやめ下さい!」
「本人が言ってるじゃありませんか。呪い殺されますぞ!」
「どうか、お考えを改めて下され!」
口々に叫ぶ貴族たちの言葉を聞いていると、押し込めたはずの不安がムクムクと、勢いを増して湧き上がる。
この子は、七年前の少年と違うのかもしれない。
少年や彼らの言う通り、目を合わせてしまえば、殿下の命は……。