男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
どんなに周囲が声を上げても、殿下はやめようとしなかった。
亡き弟君の意思を継ぐという、強い決意が、その背中に見て取れる。
「じっとしてろ」と命令し、少年の腕を頭から外させた殿下は、自らの手で包帯を外しにかかった。
「殿下、お気を確かに!」
「おやめ下され!」
バルドン親子以外の貴族たちが口々に叫ぶ中、迷いのない殿下の手はついに包帯を取り去った。
少年は自分の体を抱きしめ、震えている。
両目はしっかりと閉じられたままで、目を合わせることを彼が一番、恐れているようだった。
「ハミン、目を開けろ」
「た、大公様が、死んじゃう……」
「大丈夫だ。俺は死なない。信じるんだ、ハミン」
私の中の不安はピークに達していた。
殿下の身にもしものことがあったら、私は……。
激しい恐怖に突き動かされて、壁の隅から駆け出した。
殿下と少年の間に飛び込むように割って入り、少年の頬を両手で挟むと、額と額をくっつけた。
そうすれば、殿下は少年の目を見ることができないからだ。
驚いた少年は反射的に目を開けてしまい、私は至近距離で目を合わせることとなる。
カラスの濡羽のように真っ黒で艶やかな瞳の中に、それよりもさらに黒い三重の輪が見えた。
呪うなら、殿下ではなく私を……そう思って、これ以上ないほどにしっかりとその目を覗き込んでいたら、「おい」と不機嫌そうな声を後ろに聞いた。