男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
そこまで話した私は、肩をビクつかせた。
クロードさんは目を見開き、殿下は紅茶のカップを滑り落としたからだ。
ゴツンと絨毯に落ちたカップは、持ち手の部分が折れてしまった。
一級品なのに、もったいない……。
それを気にする素振りは微塵もなく、殿下は私の両肩を強く掴み、低い声で詰問してきた。
「橋が切れたということを、お前が口にするより先に、ロドリグが言ったのか?」
「は、はい。そうです。隣国との関係により、橋が切れたとは発表できず、公には伏せられている死因だとも言ってました。
『俺は父上から聞かされて真実を知っているけど、他の貴族は知らない情報だよ』と」
険しい顔で見つめてくる殿下に、私の背には冷や汗が流れ落ちた。
私はなにかマズイ話をしたのだろうか……?
ロドリグが話したことは、嘘ではない限り、殿下も知っていて当然の話。
それなのに、なにに驚いて、そんな風に顔をしかめるのか……さっぱり分からない私は戸惑うばかりだ。
掴まれている両肩が少し痛いが、それよりも、殿下が噛み締めている下唇から、血が染み出しているのが気にかかる。
「あの、私はなにかおかしなことを言ったでしょうか……?」
震える声で問いかけると、殿下はハッとしたように私を離して、唇の血を手の甲で拭った。
その後は……落ちて割れた足元のカップを見つめて、険しい顔のままにくつくつと笑い出すから、気が触れたのかと心配になる。