男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
オロオロしてクロードさんを見ると、いつも笑顔の彼も苦悶の表情を浮かべていた。
ひとりだけ事情の分からない私に、クロードさんは静かな怒りのこもる声で説明してくれる。
「隣国を気遣い、ことを伏せたのは、その通りです。ロドリグ殿はバルドン公爵より、その話を聞いたと言ったようですが、殿下は公爵にも、橋のことは教えておりません」
「えっ!?」
「知っているのは城内のほんのひと握りの者と、事故を知らせて下さった、大叔父にあたるシャバネル卿だけなのです。
真実を知る者には、他言しないという旨の誓約書を書かせましたので、恐らくは皆、心にしまっていることと思います。罰せられたくないでしょうから」
と、いうことは……。
私はゴクリと唾を飲み込んだ。
クロードさんは一拍おいてから、ハッキリとした口調で続きを話し出す。
「そうです。他に知る者がいるとすれば、橋を落とした犯人だけかと。
橋を吊るしていた鉄のワイヤーは、隣国の王、自らが使ってほしいと送ってきた品物でした。
隣国の最先端の技術で作られた自慢の輸出品なのです。それなのに、二年も持たずに切れるとは、怪しいとは思っていたのですが……」