男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました

クロードさんの話を聞きながら、思い出していたことがあった。

あれはいつのことだったか……そうだ、邪視騒ぎの最中に、殿下がバルドン家を見張ると言い出したときのこと。

殿下が出て行った後の謁見の間で、クロードさんは私にこんな話をしてくれた。

七年前の邪視騒ぎの一件で、バルドン公爵と対立していたカブレラ公爵が失脚することとなったが、全てはバルドン公爵が仕組んだことではないかという疑惑を、殿下も持っているのだということを。


まさかアベル様の事故まで、バルドン公爵の仕業なのかと怒りの湧いた私だが、『さすがに、そこまでは違うと思いたいものです』とクロードさんに言われた。


『アベル様にとっても叔父でありますし、殿下も本当は信じたいのですよ。バルドン公爵を』


現在と過去、ふたつの邪視騒ぎをバルドン公爵の仕業ではないかと怪しんでいる殿下だが、アベル様の死だけは、不運な事故だったと思っていた。

いや、殿下は思いたかったんだ。

最愛の弟を、叔父が殺すはずはないと……。


その苦しい心を心配して隣を見ると、殿下はもう笑っていなかった。

殺気に満ちた青い瞳が、割れたカップを睨みつけている。

私に向けられたものでなくても、鳥肌が立つほどの冷たい視線だ。

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