男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
眉間に深い皺を刻んで立ち上がった殿下は、クロードさんに命令する。
「叔父上……いや、バルドンを今すぐ呼び戻せ。もう容赦しない!」
日が落ちて、執務室にはランプが灯されていた。
先ほど、晩餐の用意が整ったとジャコブが知らせに来てくれたが、今はそれどころじゃない。
執務室にいるのは私ひとりきりで、ドアにへばりつくようにして聞き耳を立てていた。
殿下とクロードさんは、斜め向かいの謁見の間にいて、呼び戻したバルドン公爵を尋問中。
ドアを二枚隔てていても、微かに聞こえてくる怒声にハラハラしていた。
まだ日の明るいときに、ここから出て行く殿下は烈火の如く怒っていた。
その怒りは当然だと思うけれど、心配にもなる。
ロドリグが漏らした話だけを根拠に、バルドン公爵を追い詰めても、いいものだろうか?
公爵がすんなり認めて謝るはずはないし、怒りのあまりに殿下が剣を抜いたら……。
怒鳴り合う声が聞こえても、さすがに会話の内容までは聞き取れない。
この部屋で大人しく待っているように命じられた私だが、気になって仕方なく、そっとドアを拳半分ほど開けてみた。
すると、廊下にバタンと大きな音が響くから、肩をビクつかせる。
バルドン公爵が蹴破りそうな勢いでドアを押し開け、廊下に出て来たのだ。