男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました


◇◇◇

秋は終わり、雪がチラチラと舞い降りて、都を白く染めゆく……。


殿下がバルドン公爵に、決別宣言を突きつけた日から二十日ほどが過ぎていた。

今回の邪視騒ぎに加え、七年前のアベル様の事故まで調べ始めたので、殿下も青の騎士団も大忙しだ。

橋を修理した職人や事故現場に近い村々に聞き込みをしているそうだが、七年前の記憶は曖昧で、こちらの期待するような情報はまだ得られていない。

今回の邪視の件では、肝心のバルドン家の執事が、全てを白状する前に牢の中で自害してしまい、頭を抱える状況だった。


なかなか進展せぬ調査の中で、危惧していた事態も訪れる。

バルドン公爵が、アラブ諸国からの薬や香辛料の輸入を止めてしまったのだ。

今のところ倉庫にまだ充分な在庫があるので価格に大きな上昇はみられない。

殿下は隣国に掛け合って、新たな流通ルートを模索しているところだが、それでも将来的には確実に薬や香辛料が不足するということだ。


バルドン家の貿易会社と取引のある商人や、利益のおこぼれをもらっていた貴族たちも、懸念材料。

数日前は連名の嘆願書を携え、殿下に謁見を願い出てきた。

その嘆願書には、バルドン公爵への取り調べを中止してほしいと書かれており……。


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