男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
先程、終課の鐘を聞いたところだった。
暖炉に小さな炎を残しただけの暗い自室で、私は窓辺に立って外を眺めている。
薄雲を被る月の光が雪に反射して、辺りはぼんやりと明るく見える。
雪は薄っすらと積もっているだけなので、人が踏んだばかりの地面は、足跡の形に雪が溶けて消えていた。
城下街の家々の窓辺に灯っていたランプの明かりが、ひとつ、またひとつ消えていく。
この部屋の窓から見えるのは西側の景色で、バルドン公爵の大きな屋敷も遠くに確認できる。
その窓辺にはまだ明るい光が灯されていて、それを見つめて心の中で呟いた。
お願いだから、これ以上、殿下を苦しめないで……。
小さな溜息をついて、白い寝間着の胸元をぎゅっと握りしめた。
私にできることは、殿下を心配することだけなんて、情けない。
調査に参加させてもらえず、護衛の任務からも外されて、私の青の衣は、ただの飾り。
私を危険に晒したくないという殿下の気持ちは嬉しいけれど、やっぱり私は殿下の側で役に立ちたい。
たとえ危険な目に遭ったとしても……。
カーテンを閉めて窓辺から離れた私は、さっき着たばかりの寝間着を脱いで、青の衣に袖を通した。
それから、隣の部屋に繋がるドア前に立つ。