男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました

北門から駆け込んできたハミンは、なにかを腕に抱いている。

屋敷の北側の通用口に向かって走ってくるので、その姿はすぐに見えなくなった。


なにを抱いていたのだろう?と気になって、授業中だというのに立ち上がり、窓辺に寄る。

すると案の定と言うべきか、教師に叱られた。


「ステファン殿、ご着席を。私の授業はつまらないと思っておいでですかな?」

「いえ、そんなことは……すみません。座ります」


他のお坊ちゃんたちにクスクスと笑われて、席に座ろうとしたら、廊下に誰かの走る足音が聞こえて、その後にバタンと、ドアが勢いよく開けられた。

何事かとみんなの視線が集まる中で、飛び込んできたのはハミンだった。


「ステファン様、鳩を助けて!」


ハミンは泣きそうな顔で駆け寄ってきて、腕の中に抱いている灰色の鳩を私に見せた。


「怪我してるね」


羽の付け根の辺りに、なにかがぶつかってできたような傷があり、出血は止まっているが血に濡れた羽が痛々しい。

この鳩はどうしたのかと問うと、ハミンは黒い瞳からポロリと綺麗な涙をこぼした。


「モズに襲われていたから、助けようと思ったんだ。石を投げたらモズじゃなくて、鳩に当たっちゃって……」


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