目を閉じてください
と、
2階に着いたとき、扉が開いて人が乗ってきた。
「あっ、すみません」
誰も乗ってこない空気で、無意識に入り口付近に立っていた私。
乗ってきた女性越しに、向こうを通る人に紛れて知っている顔が視界に入った。
「…心咲さん……???」
肩を寄せて親しげに寄り添う相手は、叶多さんとは違うイケメンだった。
いや、気のせいだ。見間違いだきっと。
ぶるぶると首を振る。
確かめる間もなく扉は閉まった。
そして3階。
降り立ったけれど、またキョロキョロしてしまう。
そこらのスーパーとかと違ってトイレやらATMのあからさまなマークがない。
トイレすら、小さく横顔が模された紳士、婦人のマークが壁の目立たない柱に描かれている程度だ。