夢幻の騎士と片翼の王女
「あぁ、どんなお姿なのかしら?」

「一目だけでも見てみたかったわ。」

メアリーさんとアンナさんは、小さな窓を見上げ、うっとりとした表情を浮かべた。



二度目の起床は極めて爽やかなものだった。
どうしてあんな恐ろしい夢を見たのかわからないけど、きっと、こんなところに閉じ込められたせいだろう。
ストレスがあんな夢を見せたんだと思う。
とりあえず、気にしないのが一番だ。



その日は、朝から大砲や花火のような音がしていた。
派手な楽団の演奏する軽快な音楽も…
アドルフ様とジゼル様のご婚礼が始まってるんだ。
私も、ちょっと興味はあった。
王族の結婚式なんて、めったに見られるものじゃないもの。



せめて、もう少し下に窓があれば、ちょこっとだけでも見られるのに…
そんなことを言ったら、メアリーさんが教えてくれた。
窓は飛び降りをふせぐために、あんな高くにあってあんなに小さいんだって。
そんなことを聞かされたら、この部屋にいること自体がなんだか気持ち悪くなって来る。
でも、そう思ってもここからは出られないんだけど…



今朝は、アドルフ様もご婚礼ということでか、朝から豪勢な食事が出された。
朝早くに、下から調理された料理が運ばれて来る。
教会で食べていた質素なものとはまるで違う、食べきれない程のご馳走だった。
今日は、それだけではなく、服や下着やアクセサリーもたくさん運ばれて来た。
部屋には色とりどりの綺麗な花も飾られた。
まさに至れり尽くせりだ。
みんな、私のことをまるで王女様みたいに恭しく接してくれる。
なんだかくすぐったいような不思議な気分だ。
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