夢幻の騎士と片翼の王女




「ここだ。」



次の朝、朝食を食べてから、老人は私をどこかへ連れて出かけた。
家からしばらく歩いたところにお墓があり、老人は、それが母の墓だと言った。



「お母さん……」

墓には白い花が手向けてあった。



「おまえは母親にそっくりだな。」

以前からよくそんなことは言われていたけれど、自分ではよくわからなかった。
ただ、そんなことを言うからには、本当にお母さんを湖から引き上げてくれたのだと…そのことだけは信じられるような気がした。


「安心しろ。
おまえの母親は、とても穏やかな顔をしていた。」



穏やかな顔がどういうものなのか、当時の私にはわからなかったが、それは嘘ではないかと思った。
私は、水際まで行っただけでも足がすくんだのに…
お母さんだって、怖くなかったはずがない。
お父さんには、最後まで浮気をしたと思われてたんだし、それが悔しくなかったはずがない。
きっと、この老人は私のことを気遣ってそんな嘘を吐いたのだろうと思ったから、私も嘘を吐いた。



「そうですか…それは良かった…」

私は、お墓の前に跪いて祈りを捧げた。
まだ、お母さんが死んだということが、夢なのか現実なのかもよくわからなかったけど…
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