夢幻の騎士と片翼の王女




「いただきます。」

そう言って食べようとしたら、神父さんはなにやらお祈りを始めて…
それを見て、私は焦って手に持ったスプーンを置き、同じように両手を組んで、神父さんのお祈りが終わるのを待った。



テーブルの上には、豆のスープのようなものと野菜を炒めたようなもの、そして、パンとりんご…
神父さんってこんなに質素な食事をしてるんだ…



「ところで…あなたは異国の方のようですが、どこから来られたのですか?」

「えっ!?」


何を言ってるんだろう?
私は、髪こそ染めてはいるものの落ち着いた栗色だし、そもそも私の顔はどう見ても日本人に見えるはずだけど…



「あの…私は日本人ですよ。」

「日本…?」

神父さんは、怪訝な顔で私を見た。



「聞いたことがありませんが、その国はずいぶん遠いのですか?」

おかしい。
神父さんが私をからかうはずはないと思うけど、どうしてそんなことを言うんだろう?



「あの…神父さんこそ、どちらから来られたんですか?
イギリスですか?それともアメリカ?」

私が訊ねると、神父さんはまた困惑した表情を浮かべた。



「私はここ、ユーロジアの生まれです。
この国を出たことはありません。」

「……ユーロジア…?」

確かに私は地理に詳しいってわけじゃないけど、有名な国ならそこそこ知ってるはずだ。
だけど、ユーロジアなんて国の名前は聞いたことがない。
< 36 / 277 >

この作品をシェア

pagetop