夢幻の騎士と片翼の王女
それに、もっとおかしいのは、神父さんが言った『ここ、ユーロジア』という言葉だ。


私は、もちろんパスポートは持ってるけれど、日本から出た覚えはない。
どんなに近くの国だとしても、飛行機や船に乗らなければ日本を離れることは出来ない。
日本は島国なんだから。
でも、そんなものに乗った覚えはないし、時間だって経ってない。
だから、どう考えても、ここが国外のはずがない。



「神父さん…ここはユーロジアではなく、日本ですよ。」

私がそう言うと、神父さんはじっと私の顔をみつめた。



「まだお名前をうかがってませんでしたね。
あ、私はこの教会に勤めるフィリップと言います。」

「私は、松下亜里沙です。」

「マツシタアリサ…珍しいお名前ですね。」

そんなことを言われたのも初めてだ。
おかしい…なにかがおかしい…
さっきから、神父さんと私の会話はなにかズレている…



「マツシタアリサさん、あなた…足以外にけがはありませんか?
たとえば、頭を打ったとか…」

「……いいえ。」



今の質問はどういうことだろう?
神父さんは、私のことをおかしいと思ってる?
それとも……実際に私がおかしくなってるの?



(そんな、まさか……)



私はそっと頭を触ってみた。
特に怪我をしているようなところはない。
傷むところだってない。



神父さんの心配そうな顔を見ていると、私の心に不安が大きく広がった。
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