夢幻の騎士と片翼の王女




「どうやら眠れなかったようですね。」

次の朝、神父さんは私の顔を見るなりそう言った。
きっと、相当酷い顔をしてたんだと思う。



「さぁ、いただきましょう。」

神父さんは朝食の用意をしてくれていた。
食欲はすっかりなくなっていたけれど、せっかくのご厚意を無視するわけにはいかないから、無理に口の中に流し込んだ。



「さて…と。
マツシタアリサさん、あなたは今後どうしたいですか?」

「え……どうって……」

まだ心の中は混乱していて、これからのことがまるで考えられなかった。



「あの……ここに電話は……」

「電話?……なんですか、それは…」



神父さんはとぼけているわけでも、ふざけているわけでもない。
そのことは神父さんの顔を見ればわかる。
それに、薄々は気付いていたことだ。
教会には電化製品の類は何もなかった。
きっとここはすごく文明の遅れた国で、まだ電話さえ普及していないんだろう。
電気さえないんだから。



「……なんでもありません。」

深い絶望の波に飲み込まれた。
電話がないのでは、家と連絡を取る手立てはない。
出来るとすれば、何とかこの国を出て、もっと文明の発達した国へ行くことだ。
でも、今の状態では、まず、何からすれば良いのかもわからない。
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