夢幻の騎士と片翼の王女




「ば、馬鹿なことを…!!」



お店に戻り、私はピエール様から言われたことをジェームスさんに話した。
ジェームスさんも喜んでくれるだろうと思ってたのに、突然、赤い顔をして怒りだして…



「……ジェームスさん……どうして……」

「亜里沙…わかってるのか?
それがどういうことなのか…」

「え??」



何のことやら、私にはまるで意味が分からずぼんやりしてると、ジェームスさんは顔を近付け、声を潜めて話し始めた。



「え…え…ええーーーーーっっ!」



それを聞いた私は思わず大きな声を上げてしまった。
だって…だって…
リュシアン様は、その…すごい女好きで…
侍女っていうのは、つまりはその……リュシアン様の夜のお相手をするってことだそうで…
そんなことを考えたら急に恥ずかしくなってきた。
だって…私…まだそういうことをしたことないし…
一応、彼氏みたいな人がいたことはあるけど、お互い晩生だったから、最後の一線は越えられなくて…



「亜里沙…この話は断れ。
いや、俺が断ってやる。」

「え……」



確かに、それは怖いことだけど…
でも、あの壺を割ったのは私だし…
あの壺の価値を考えれば、そのくらいのことはしないといけないのかもしれない。



(そうだよね…
今更、いやだなんて言えないよね…)



それに、相手は王子様…
初めての相手が王子様だなんて、光栄といえば光栄なことだよね。
普通だったら、会うことすら出来ない相手だもの。



私は心を決めた。
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