ヴァージンの不埒な欲望
髪の毛は丁寧にブローをし、ハーフアップにしてみた。メイクも上野さんの言葉と、あの日、鏡に映っていた自分の顔を思い出しながら、時間をかけてがんばった。
眼鏡も、かけていない。目の前の世界が急に広がってしまったようで、かなり心許ないけど。
前回と同じ待ち合わせ場所で、拓夢さんはやっぱり待ち合わせ時間の十分前には来てくれた。
保冷バッグに入れたお弁当を、どこに置いておこうかと話した。あまり日が当たらなそうな、後部座席の足元に置く事になり、拓夢さんがタオルを敷いてくれた。
そんな、ちょっとした気遣いが嬉しかった。
助手席のドアを開いてくれた時、私の耳元の髪の毛をスッと撫でられた。
「今日も、可愛いね」
「っ!あっ、ありがとう、ございます」
拓夢さんの自然な接触と褒め言葉に、私の顔は一瞬で熱を持った。真っ赤になったであろう顔を俯かせ、ぎこちなくお礼を言うのが精いっぱいだ。
拓夢さんのこれには、いつまで経っても慣れないと思う。
拓夢さんに「図書館に行く」と言われて、私は当然のように市立図書館に行くものだの思っていた。
すぐに市立図書館に向かっていない事は気付いたが、県立図書館に行くとは全然思っていなかった。
同じ市内にある図書館なのに、それぐらい私には縁のない場所だった。