ヴァージンの不埒な欲望
館内に入ってみて、もっと早く来てみればよかったと思った。どこかこじんまりとした印象の市立図書館とは違い、県立図書館の明るく開放的な雰囲気も、悪くないと感じた。
立ち止まって館内を見上げていた私の斜め後ろに、拓夢さんはいた。
頬を綻ばせながら振り向いた私に、拓夢さんも目元を緩めた。
館内に入って右手には、自動販売機と椅子が並んでいるスペースがある。ここでは、飲食をしてもよさそうだ。おにぎりやパンを持ち込めば、ここで食事休憩もできる。
まだ十時半にもなっていないせいか、飲み物を飲む人ぐらいしか見かけないけど、大丈夫なはず。
一人で市立図書館に行ったら、つい食事の為に外に出るのが面倒で、お昼を抜いてしまう事もある。自動販売機のある休憩スペースはあるが、三~四人掛けのソファーが三つ並んでいるくらいのスペースしかないので、そこで一人でモソモソとおにぎりを食べる気にはなれなかった。
ここには、一人掛けの椅子が三十くらいは並んでいる。スペースも広くとってあるので、一人でもゆっくりとできそうだ。
さすがに今日ここで、お弁当を食べる気にはならないが、一人で来る時にはおにぎりを持ってこようかな。
そんな事を思えば、ワクワクする。新しい世界が、ほんの少しだけ広がった。