ヴァージンの不埒な欲望
自分の世界から現実世界に、少し意識が浮上したところで、私の左側からの気配を感じた。
何の気なしに、左側を見上げた。
「っっ!?」
「いつまでここにいるつもりですか?私が必ずここに来るという、自信でもあるんですか?」
私の横に立ったその人が、冷たい瞳で私を見下ろしていた。
「いっ、いえ!」
あまりの驚きに、言葉が出ない。その人が、どうしてここにいるの?『いつまで』て、どういう意味だろう。私は、テーブルの右側の方に置きっぱなしにしていたスマホを、慌てて手に取った。
十五時三十六分!私、一時間以上も物思いに耽っていたのか!
事実に気付いて、何とも居たたまれない気持ちのまま、とりあえず口を開いた。
「ちっ、違うんです!私がここに来られるのは、今日だけで。とっ、とてもすてきな珈琲館だから、最後にゆっくりコーヒーをいただけたらなと。そっ、その、あなたがここに来る事はないと、わかっていましたから」
しどろもどろになりながら、必死に言葉を繋いだ。
ふっと小さく溜め息をついた後、その人は私の向かいのソファーに腰かけた。
まるで待っていたかのように、マスターがお水とおしぼりを、その人の前に置く。その人がブレンドを頼んだので、私もおかわりをお願いした。
二人の間に、沈黙が流れる。