ヴァージンの不埒な欲望

その人を見つめながら、暫し考える。ある事を思いつき、傍らに置いていたバックから一冊の文庫本を取り出す。掛けていたお気に入りのブックカバーを外した。

その人に向けて、テーブルの上に置く。

「私の愛読書です。中をご覧になってみてください」

怪訝な顔をしながらも、その人は本を手に取った。

「『黄金王太子の甘く不埒なレッスン』」

その人は表紙のタイトルを読み上げて、私の顔を見た。私は小さく頷く。ジワリと、顔が火照ってくる。

その人が本を手に取り、表紙を捲る。すぐに動きが止まり、またページを捲る。

本の表紙が、私の好きな作者さんのイラストだったので、この本を買った。本の中にも挿し絵があるのだが、この『ポプリ文庫』には冒頭に三ページ程、カラーの挿し絵があり、私のお気に入りだ。ちゃんと文章も添えてあるので、わかりやすいと思う。

本を開いたまま、一瞬その人は固まった。が、すぐに目線を上げて私を見つめる。

「これが、あなたの愛読書?」

その人の視線を受けながら、さらに顔が熱くなってくる。

「はい。乙女系ノベルといいます。女子向けのちょっと……かなりエッチな描写もありの恋愛小説です。それは私の愛読書の一冊です。私は今までに乙女系ノベルを、何冊も読んできました」

「何冊も」

「はい。『何冊も』です」

少しの間、二人で見つめあった。その人がサッと視線を逸らし、文庫本をテーブルの真ん中辺りに置いた。


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