ヴァージンの不埒な欲望
私の眼鏡には、度は入っていない。視力は、いい方だと思う。
高校生の頃、萌と雑貨屋さんに行った。そこにあった眼鏡を何となくかけた時、とても安心した。薄いレンズを一枚挟んで周囲を見るだけで、私と周囲の間に目に見えない壁を感じた。
たったそれだけの事に、ひどく安心した。
雑貨屋さんで黒縁の大きめな眼鏡を買って、すぐにかけた。そんな私を見て、萌は少しだけ眉尻を下げて笑った。
自宅に戻っても、訝しげな顔をしたのは兄だけで、父と母は何も言わなかった。
「あっ!それは……」
せっかくきれいにメイクをしてもらったのだから、眼鏡がない方が確かに映えると思う。でも、眼鏡は私の精神安定剤のような物だから。
何と言って眼鏡を返してもらおうと、私は言葉を探した。上野さんは、そんな私の瞳を見つめたまま口を開いた。
「星野さんは先程、私が魔法をかけたとおっしゃいました」
「はい」
小さく頷きながら答えた。
「女の子は、誰でも魔法がつかえるんですよ。私のものより、もっと強力な魔法です」
「それは、私にもつかえますか?」
上野さんの優しさを湛えた真っ直ぐな瞳から、目を逸らせなかった。
「もちろんです!」