ヴァージンの不埒な欲望

緊張していたけど、シチューの記憶をきっかけに気持ちが解れた。初めて男の人とシェアして食べたパスタとピザを、ゆっくりと味わう事ができた。

きれいになったお皿が下げられると、コーヒーとシフォンケーキが運ばれてきた。

「オーナーからです」お店の人の言葉に、二人でお礼を言った。

「安西さんには、本当にお世話になりましたから」

お辞儀をしたお店の人がテーブルを離れて、安西さんに訊いた。

「こちらでも、お仕事をされたんですか?」

「改装の時に相談にのったんだ」

ヘアーサロンに横山さんのような個人の仕事、レストラン。拓夢さんのお仕事の幅の広さに驚いた。

「いろんな業種のお仕事をするんですね!」

「大企業を相手にするコンサルティングファームでもないし、ITや人材などの専門的なコンサルティングをする訳でもない。個人の小さな事務所だから、自分達にできる事は、なんでもするよ」

拓夢さんは肩を竦めて言った。私なりにコンサルティング会社についてネットで調べてみたから、拓夢さんの言っている事はなんとなく理解できる。

「私、AKパートナーズのホームページを見た事あります。やっぱり、すごいと思いました」

それを見た時の素直な思いを、拓夢さんに告げた。

「ああー、うん、そうか。確かに、自分なりに努力はしたけど。アメリカに留学したり、こうして起業できたのは、加賀見のおかげだから」

そう言った拓夢さんは、らしくない曖昧な笑みを浮かべた。


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