ヴァージンの不埒な欲望
私も立ち止まり、拓夢さんを見上げてから、カップルの男性にそっと視線を動かした。
「あっ」と私までもが、小さく声を上げてしまった。
目の前には、先程会話の中にも登場した加賀見さんがいた。二人とも驚いているという事は、ここで会ったのは偶然なのだろう。
「安西、お疲れ!ここで会うとは、思わなかったよ」
ホームページで見るよりも十倍は華やかな笑顔で、加賀見さんが拓夢さんに声をかけた。
「本当にそうだな。楠さん、お久しぶり」
加賀見さんに肩を竦めて応えた後、拓夢さんは、加賀見さんの隣にいたきれいな女(ひと)に声をかけた。
「安西さん、お久しぶりです。いつもありがとうございます!」
楠さんは、私と同い年くらいか、少し下ぐらいかな。スラッと背が高く、涼しげな目元と、艶やかな長い黒髪が印象的だ。
二人ともステキ!すごく、お似合い……私の愛読書、乙女系ノベルに登場しそうな感じ。
「で、安西。紹介してくれないの?」
頭の中で不埒な妄想をしかけたら、加賀見さんと目が合って、慌てて俯いた。
バカ、バカ!拓夢さんのお友達をつかまえて、私ったらなんて失礼な妄想をっ!
「まぁ、そうだな。こちら友人の、星野愛美さん。一緒に仕事をしている加賀見と、マンションの清掃をお願いしている楠さん」
拓夢さんにしてはぞんざいな紹介の仕方に、私達はお互いに頭を下げた。