ヴァージンの不埒な欲望

「へぇ~、“友人”ね……」

加賀見さんからの意味ありげな言葉と視線に、私は居たたまれない気持ちになり身を竦める。

「加賀見さん、予約の時間に遅れちゃいます」

楠さんが加賀見さんに声をかける。楠さんから、気遣うような視線を感じた。

見た目だけでなく、中身もきれいな人だ。私は、小さく微笑みを返した。

「そうだね。灯里(あかり)ちゃん、行こうか。星野さん、失礼します。じゃあ安西、また明日」

「ああ、また明日。楠さん、またね」

お互いに会釈して別れた。なんとなく二人の後ろ姿を見送っていると、加賀見さんの左手が楠さんの腰の辺りに添えられた。慣れた感じのエスコートに、二人の距離の近さを感じた。

拓夢さんの車の助手席に座る。シートベルトを締めて、ハァ~と溜め息をついた。

「加賀見さんと楠さん、とてもお似合いですね」

うっとりと呟くと、拓夢さんが苦笑を浮かべた。

「確かに、お似合いだとは思うけど。あの二人は、付き合ってはないよ」

「えっ!?だって、あんないい雰囲気なのに?」

以外な拓夢さんの言葉に、私はつい強い口調となった。

「お互いがお互いに好意を持っているのは、端から見ればよくわかるのに。自分自身の事となると、よくわからなくなるらしい」

小さく溜め息をついた後、拓夢さんは加賀見さんと楠さんの事を話した。


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