ヴァージンの不埒な欲望
現在入居しているマンションの清掃を、楠さんが働く清掃会社に週に一回で依頼していた。体調を悪くした加賀見さんが昼間にマンションに戻った時、清掃に来ていた楠さんと鉢合わせしてしまう。結局、楠さんは加賀見さんの看病をする事となり、それから少しずつ親しくなった二人。
「いつ頃からか、加賀見の清掃に入ってもらうペースが週に二回になり、楠さんが加賀見の為に料理を作り置きするようになった。その分の料金を払おうとしたが、楠さんは断った。『これはあくまで勝手に個人的にしている事だから』と言って。料金を支払うかわりに、ああしてたびたび食事や映画や、その他いろいろと一緒に出かけているそうだ」
「“デート”ですね……」
「ああ、“デート”だと思う」
二人で顔を見合わせて、苦笑いが溢れた。
加賀見さんと楠さん。相手にもう一歩踏み込めない理由が、何かあるのかもしれない。
「ちょっとしたきっかけがあれば、変わるような気もしますが」
「“ちょっとしたきっかけ”ね……」
淡々と話す拓夢さん。もしかしたら拓夢さんは、今の二人の状態を歯痒く思っているのかな。
その後、拓夢さんは空気を変えるように明るい声を出して言った。
「とりあえず、車を出すよ」
帰りながら、今日の私の大変身を家族にどう説明するかと、拓夢さんに訊かれた。
拓夢さんが言ってくれるまで、全然その事が頭になかった私は、今さら青ざめる。