ヴァージンの不埒な欲望

仕事の日は、しばらくは眼鏡を掛けて行く事にした。髪も切ったし、眉毛も整えている。いきなりいろんな事を変えてしまったら、職場の大先輩達の追及が厳しくなる。

そう思って眼鏡を掛けたのに、結局こうして、職場のグループリーダーの二宮さんから、昼休憩に追及を受けているのだ。

「きっ、昨日、声をかけられたんです」

母にした話を、さらにたどたどしく繰り返す。

「ふ~~ん。本当に、それだけ?」

「はい!それ、だけです」

二宮さんの探るような視線に、さらに身体を小さくしながら答える。

「二宮さん、それくらいにしておきましょう。それ以上は、パワハラですよ?」

私と向かい合って座る志村(しむら)さんが、滅多に見せない真剣な顔で言う。

「おっと!いけねえ、いけねえ!」

二宮さんが左手でおでこをパチン!と叩いた後、冗談めかして言った。周辺で小さな笑いが起こり、とりあえずこの話題は終わったようだ。

新人にも気さくに声をかけ、親身になって相談にのってくれる。三人いるグループリーダーの中で、新人指導が一番上手なのが二宮さんなので、私のような厄介な新人は、二宮グループに入れられる。二宮さんが“パワハラ”と、一番遠い所にいる人だとみんながわかっているので、先程の会話が笑い話になるのだ。


< 94 / 143 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop