明日の蒼の空
「今夜の晩ご飯も美味しそうね」
 甘いシャンプーの香りを漂わせている夏美さんが、バスタオルで長い髪を拭きながら席についたので、私も席についた。

「いただきます」
 夏美さんと私はフォークを握り締めて、ミートソーススパゲッティを食べ始めた。

 赤ワイン入りのミートソースはまろやかな味わいで、大き目のひき肉の触感がいい。パスタはちょうどいい固さ。自分ではまあまあの出来だと思う。美味しく作れたと思う。私はお味噌汁をひと口飲んで、パスタを口に運んでいる夏美さんの顔を見つめた。

 私が作った料理を美味しそうに食べてくれている夏美さんの年齢は三十二歳。私の姉の年齢は二十八歳。歳は四歳ほど離れているし、顔は似ていないけど、性格は似ているところがある。大らかで優しくて、おしゃべり好きで明るい。

 なかなか友達ができない私に優しく接してくれる夏美さんは、友達のような存在であり、もう一人の姉のような存在でもある。

 夏美さんのことは、二週間ほど前まで、藤崎さんと苗字で呼んでいた。

「一緒に暮らしてるんだから、夏美って呼んで」その日から、夏美さんと呼ぶようにしている。
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