明日の蒼の空
「ひばりさんか菓絵さんに、空のキャンバスに絵を描く方法を聞いた?」

「いえ、まだ聞いていません。今日も聞こうかと思ったんですが、勇気を出せなくて聞けませんでした」

「そっか。蒼衣ちゃんは絵が上手なんだから、もっと自分の絵に自信を持ったほうがいいと思うよ」

「…………自分の絵に自信がないわけではないんですが、みんなに見られると思うと恥ずかしいんです」

「蒼衣ちゃんの恥ずかしい気持ちはわかるけど、自分の絵を、多くの人に見てもらえたら嬉しいでしょ?」

「はい。嬉しいです」

「嬉しいなら、行動あるのみだと思うわよ」

「そうですね。明日こそは勇気を出そうと思います。ひばりさんと菓絵さん、どっちに聞けばいいと思いますか?」

「空のキャンバスに絵を描く方法を菓絵さんに教えたのは、ひばりさんだから、菓絵さんに聞くより、ひばりさんに聞いたほうがいいかもね」

 東ひまわり町で暮らして、二年と三ヶ月になるという夏美さんは交友関係が広い。私の知らないことをいっぱい知っている。

「そうだったんですか。では、ひばりさんに聞いてみようと思います」
 明日こそは必ず。私は心の中で固く誓った。

「蒼衣ちゃんが空のキャンバスに描いた絵を見るのが楽しみだな」
 嬉しそうな顔で言ってくれた夏美さんは、冷蔵庫からビールを取り出して、再びテーブルについた。いつもは一本だけど、今日は二本。
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