聖なる夜にくちづけを。
「それは無理か」
すっぱり切り替えることができたならそれはそれは楽だっただろうけれど、この歳になると流石にわかることがある。
好きなものをやめるなんて“やーめた!”ではできないのだ。
自然に心が離れていかない限りやめようと思っていたって結局は心がまだ求めているものだ。
今から好きじゃなくなる、なんて自分の意思でコントロールできるのならどんなに楽だろう。
それができないからこそ感情は本能に近いところにあるのだろうけれど。
好きでい続けるにはパワーが必要だ。
けれど簡単には止められないんだから諦めるしかない。
そもそも聡子のように潔ければどしんと構えることもできるのかもしれないけれど、それができないからいつも右往左往してしまう。
歳を重ねたって性格は簡単には変わらない。
むしろ歳を重ねた分、頑固に変わらないのかもしれない。
それなら必要なのは……
「努力、か」
ふたりの距離を縮めるための、現状打破するための努力。
何のために付き合っているのかなんて、多分、お互いに好きだから。
まだ好きだから、と信じたい。
濁りの無い好きの気持ちは長く時間をおけば惰性になりうる。
夫婦だったら、それもありなんだろうと思う。
長い年月をずっと共に歩んでいくのだから、恋愛感情の延長線上に惰性が生まれ、この中でお互いを思い合えるのであれば。
「でも私達、まだ恋人同士なんだよ……」
呟いた言葉は誰に拾われることもなく、静かに消えた。