聖なる夜にくちづけを。
ポン、とスマホが音を上げてメッセージを受信した。
流れるようにロックを解除してついでに時刻を確認すると23:30。
明日も仕事だというのに、気付けばまだお風呂にも入っていない。
メッセージを開くのを後回しにして先にお風呂に入ろうかと考えたところで、またポンと音が鳴る。
まぁいいか、とそのままメッセージアプリを開いた。
受信は思ってもみなかった彼からのもので驚く。
誕生日にメッセージが来ることに驚くなんて、どういう彼氏だよ、と自分で呆れつつ嬉しさは隠しきれない。
口下手で筆不精な彼が、自分からメッセージをくれたのだから嬉しくないはずがない。
聡子がさっき聞いてきた“どこが好き?”という質問を思い出す。
取っ掛かりは顔が好き。
所謂派手なイケメンの部類には属さない、一見すると普通な人。
だけど、笑顔がとても自然だった。
それが彼の人を表してるようで目を惹かれたんだ。
『誕生日おめでとう、一緒にいれなくてごめん』
飾り気の無いシンプルな言葉がじんわり届く。
こういうところが好きなんだから、結局はどうにもできやしない。
『ありがとう。無理しないで、仕事頑張って』
返事を返してさっきまでよりも少しだけ穏やかな気持ちでバスルームへと向かった。
本当は朝、スタンプ一つで済まされた理由も分かってる。
不規則な仕事の彼には、まだ寝ていた時間なんだろう。
推察できてもやりきれなさは拭いきれなかっただけで、わかってはいるのだ。
だけどたった一言のメッセージで穏やかになれるなんて我ながら単純で現金なものだ。
それだけまだ好きなんだな、と思ってぐだぐだと燻っているのが馬鹿らしくなった。
暖かいお湯を肌に感じながら、寂寥な気持ちはシャワーで一緒に流れてしまえば良いのにと思う。
そうしたら、少しの暖かさだけで心は満たされるのに、なんて。
できるはずの無いそんなことを想いながらも、ひとつだけ心に決めた。